2022.03.27
院長ブログ
『理解』
90歳を超えていらっしゃる女性の患者様が、うつ病から回復された後に、診察の場でこうおっしゃられました。
「お陰様で、人間になれました」
うつから回復された患者様が「人間になれた」「人間に戻れた」と感じているのであれば、「人間でなくなる」感覚がうつ病ということになります。
人間でなくなる感覚を、私たち医療従事者がどれだけ理解できるのでしょうか。
私自身、患者様の症状を「理解できた」と考えることは傲慢だと思っています。
むしろ、理解できないからこそ、限られた診察時間の中でできるだけお話を聞かせていただきたいと考えるのだと思います。
私と比べて、多くの経験を積まれている“超”人間とでもいえる人生の大先輩が「人間でなくなる」感覚になるのが、うつなのです。患者様のこの言葉で、うつ病の理解を一つ深めさせていただきました。
これからも、理解できないからこそ、理解しようとする姿勢だけは持ち続けたいと思っています。
追記
「人間になれました」とおっしゃられた後に、川柳を一つ詠んでいただけました。その時のあふれる笑顔が印象的でした。川柳の内容は忘れてしまいましたが。(笑)